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2016/05/09 ベッセルって数学者を知ってますか?
ベッセルって数学者を知ってますか? 私の所属する大阪土地家屋調査士会では、大阪府下のいくつかの私立大学に、講師を
派遣して法学部の学生に不動産登記に関する授業をしています。今年私は、数年ぶり
に講師として派遣されることになりました。担当する授業は「土地家屋調査士が実施
する測量」で、90分の授業が2回(2コマと言うらしい)。
「土地家屋調査士が実施する測量」という題があるだけで、学生への配布資料を含め、
授業は一から全て担当講師が作り上げなければならないことになっています。私の授
業は6月1日と8日なのですが、現在授業で話すネタをアレコレ集めています。

ところで、ベッセル楕円体というものを知ってますか?
現在は人工衛星で正確に地球の大きさを導いたGRS80楕円体を採用しているのですが、
日本は2002年まで、他の多くの国も近年まで、地球の大きさはこのベッセル楕円
体というものを採用していました。
今般ふと『ベッセルって多分人の名前やろうけど、、、』と思い立ち、ネットで調べ
たところ、やはり人物名だったのですが、その生没年にビックリしました。
1784年7月22日 - 1846年3月17日だそうです。産業革命の前で日本ではあの伊能忠
敬とほぼ同世代。その時代の人物が、現在のGRS80楕円体とほぼ同値を導いています。
ベッセルの時代、地球が丸いことは広く知られていたでしょうが、球体でなくほんの
若干楕円体であることを含めどうして正確な測量をすることができたのでしょうか?

私の好奇心は、すこぶる掻き立てられました。現在、彼が使用した測量機器、行った
方法などが記載された文献の入手に躍起になっています。
しかし思いませんか、この正確さ。 宇宙人から教えてもらったのか?とSFの世界
を思わせます。
2016/02/08 にわか勉強中
年末、年始、けっこう忙しい日々を過ごしています。
奈良県内の山中で、Aさん所有の約10万㎡の土地の“測量業務”を受注しました。

“測量業務”というと一般にイメージするのは、よく道路で見かける測量器具(トランシットと言います)を
三脚に乗せて操作している作業を想像しがちです。確かにそれも“測量業務”です。
しかし、我々土地家屋調査士は周囲土地所有者との土地境界確定が業務に含まれます。約10万㎡という面積
も大変ながら、周囲土地所有者の数も多くなればそれだけ立会境界協議が大変な作業量になってしまいます。

去年から受けている奈良県内の山中の案件は、さらに問題を抱えていました。
隣接が公有水路を挟んで他府県との県境なのですが、奈良県の土木事務所と隣接府県の土木事務所とで、境界
の認識が違っています。渓谷線が県境であることは両土木事務所の認識が一致しているものの、今日まで数度
に及ぶ土砂崩れにより、そもそもの谷の位置がハッキリしない。
係争(とまで言えるかな?)の範囲は、最大6メートル程度で、200㎡程度に及びます。他府県側の隣接土
地(厳密には対側土地)所有者Bさんは既に亡くなっており、相続人は5名に及ぶのですが、それぞれは二束
三文の山林の土地自体に関心が薄く、また以前の谷の位置などを聞いても全く知らない様子。

このままでは、この部分の境界(公有水路)が確定せず“測量業務”が完了しません。
土地境界に関して争いがある場合、
・所有権の範囲の確定訴訟
・境界確定訴訟
・筆界特定申請
などの解決方法があるものの、それはあくまでAさんとBさんの所有の境を決めるもの(所有権の範囲の確定
訴訟)であったり、Aさん所有の◇番とBさん所有の△番の地番境界を定めるもので、県境を確定させる効力
があると言えるのか?

現在、各種の文献を引っ張り出しては、にわか勉強中。。。。
2015/12/30 土地の取得時効 その3
最近のことですが、人づてに紹介がありA弁護士さんと言う方から取時効に関する案件の依頼を受け
ました。
弁護士さんと言えば、法律の専門家。そして裁判の専門家です。しかし、、

その案件は、土地の周囲全ての筆界線が確定されているBさんの所有土地の一部についてCさん時効
が成立していて、それを認める判決まで得ていました。A弁護士さんは土地周囲は既に確定されてい
るし判決もあるので、すぐに当該部分についてBさんから所有権移転ができると思いこんでいるよう
でした。

ところが判決文を見てみると「確認の訴え」のみが提訴され、その判決しか勝ち取っていませんでし
た。確かにこの判決で当該部分についてCさんの所有が認められたのですが、当該部分をCさんが自
らのものにすべく、法務局に所有権移転を申請するためには「給付の訴え」を同時に提訴しその判決
を受けていなければ所有権移転登記は実現しません。
弁護士さんは裁判の専門家ではあるものの登記手続きの専門家ではありません。A弁護士さんも「給
付の訴え」を同時提起することを失念していたようです。

A弁護士から依頼のあったこの案件は、提訴から約3年での裁判でした。ふと不思議に思うのは、こ
の裁判の裁判官も相手弁護士も「確認の訴え」しか提訴されていないことについて、不思議に思わな
かったのか、それともやはりA弁護士同様に登記手続きを知らなかったのか?
3年の裁判の中で一度もこの不備には触れなかったのかようです。

いずれにせよこの案件、早い段階で土地家屋調査士を活用していればこの問題は起こらなかった。
土地の取得時効の裁判は世にゴマンとあり、このHPをご覧いただいている方の中にも当事者となっ
て入る人がいるかもしれません。「弁護士さんに任せているから・・・」と安心せず、ぜひ同時に土
地家屋調査士の介在をご検討ください。
2015/11/21 土地の取得時効 その2
土地の取得時効 その2 では、実際の手続きを説明しましょう。
甲さんは、あくまで乙さん所有の2番の一部(10㎡)について取得時効が
成立しました。乙さんはそれを認めなかったけれど、10㎡について判決で
取得時効が認められました。つまり甲さんは2番の一部を取得したのですか
ら2番のうち取得した範囲を分筆し、その部分の所有権を移転する手続きを
取ります。

具体的に説明すると、2番の土地をイーローB-Aーイで囲まれた10㎡と、
それ以外の40㎡とを分筆します。分筆登記の申請適格者はその土地の所有
者ですが、この場合、乙さんが甲さんの為に積極的に分筆登記を申請するこ
とは考えにくい。
そこで、こういうケースでは判決文を添付して、甲さんが乙さんに代位して
分筆登記を申請します。分筆登記が完了した時点では、2番1も2番2も乙
さん所有名義です。分筆登記後、2番2については、判決に基づいて登記名
義を乙名義から甲名義に変更する登記(これを所有権移転登記といいます)
を行います。
これが、取得時効成立の場合の登記手続きです。

ただ、ここで問題があります。
土地を分筆登記をする場合、その分筆しようとする土地の周囲の筆界が全て
確定されていなければなりません。左イラストの例で2番の東隣および北隣、
そして2番と道路との境界が全て確定されていなければ、分筆ができないの
です。以前は、残地処理という方法があったのですが、現在では判決文を添
付した分筆登記であっても周囲全ての筆界確定は必須です。

つまりは、取得時効の要件を満たし、さら
にそれを認める判決を勝ち取ったとしても、
ただちに登記上土地所有者となることがで
きないケースは多くあるのです!!