「筆界特定制度」は、適切な調査や測量を行うことで、正確に筆界を特定できる制度です。
ただし、制度を利用するにあたり発生する費用は、申請人が負担しなければなりません。
筆界特定制度における費用には、以下の2種類があります。
申請人が負担する費用
- 1.「手数料」…土地の固定資産評価額を基に算出。申請時に収入印紙で支払います。
- 2.「手続き費用(測量費用)」…法務局が定めた計算式に従って算出。申請後、測量作業までに予納する。
申請人が支払う上記2種類の費用は、あらかじめ定められた計算式で算出されます。
それがどれくらいになるのかを、具体例を用いてご説明いたします。
「手数料」の計算方法
「手数料」とは
土地の固定資産評価額を計算して
式に当てはめることで、手数料を導き出せます。
筆界特定制度に伴う手数料は、申請書の添付書類に印紙を貼って支払います。その手数料金額は、「基礎となる金額」を計算式に当てはめることで算出できます。「基礎となる金額」とは、対象甲地(申請地)と対象乙地(相手方の土地)の固定資産評価額を合計し、その額の2分の1に相当する値に0.05を乗じた金額です。図で言うと、15番1が「対象乙地」、15番2が「対象甲地」となります。ここで算出された「基礎となる金額」を下記の表に当てはめて計算した金額が、この制度における「手数料」です。
計算式と表
基礎となる金額 =(対象甲地の固定資産評価額+対象乙地の固定資産評価額)÷2×0.05
基礎となる金額 | 切り上げ単位 | 単 位 | 基礎加算額 | 計算式 |
---|---|---|---|---|
~100万円 | 10万円ごと | 800円 | 0円 | X/10×800 |
~500万円 | 20万円ごと | 800円 | 8,000円 | (X-100)/20×800+8,000 |
~1,000万円 | 50万円ごと | 1,600円 | 24,000円 | (X-500)/50×1,600+24,000 |
~10億円 | 100万円ごと | 2,400円 | 40,000円 | (X-1,000)/100×2,400+40,000 |
~50億円 | 500万円ごと | 8,000円 | 2,416,000円 | (X-100,000)/500×8,000+2,416,000 |
50億円~ | 1,000万円ごと | 8,000円 | 8,816,000円 | (X-500,000)/1,000×8,000+8,816,000 |
※表内の「X」は、「基礎となる金額」の「切り上げ単位」の刻み額を、四捨五入した数字です。
例えば、「基礎となる金額」が175万円なら、180を計算式の「X」に当てはめます。
「手数料」の計算の具体例
この図の場合、対象甲地と対象乙地の固定資産評価額の合計は2,700万円。そうすると、「基礎となる金額」は、式に当てはめると以下のように算出できます。
2,700万円÷2×0.05=675,000円
基礎となる金額の675,000円を切り上げ単位に則って切り上げると70万円となり、表の“~100万円”の欄にある計算式を使います。
70÷10×800=5,600円
したがって、この筆界特定例において申請人が負担する手数料は、
5,600円です。
- ・15番2の所有者K氏の筆界の主張 A-B-C
- ・14番と15番1の所有者F氏の筆界の主張 A-B’-C
この場合も、ひとつの申請で処理することができます。15番2と15番1との筆界特定手数料と、15番2と14番の筆界特定手数料をそれぞれ計算し、その額の合計金額が「手数料」となります。
・15番1と15番2における筆界特定の手数料
2,700万円÷2×0.05=675,000円
675,000は70に切り上げられるので…
70÷10×800=5,600円
したがって、15番1と15番2の手数料は、5,600円です。
・15番2と14番における筆界特定の手数料
対象甲地と対象乙地(2)の固定資産評価額の合計は、4,500万円。
この固定資産評価額を用いて「基礎となる金額」を算出すると…
4,500万円÷2×0.05=1,125,000円
1,125,000円を切り上げ単位に則って切り上げると120万円となり、
表の“~500万円”の欄にある計算式を使います。
したがって、15番2と14番の手数料は、8,800円です。
・具体例(2)における手数料
15番1と15番2の手数料5,600円
15番2と14番の手数料8,800円
合計14,400円
したがって、具体例(2)における申請人が負担する手数料は、
14,400円です。
「基礎となる金額」が140万円を超えると、
筆界特定の代理人になれません。
筆界特定制度の申請代理を承れるのは、土地家屋調査士のほかに、弁護士もしくは一定の要件を満たす司法書士(認定司法書士)です。しかし、認定司法書士が筆界特定の代理人になるには、「基礎となる金額」が140万円未満でなければなりません。そのため、具体例(1)であれば問題ありませんが、具体例(2)だと制限額を超えるので受託することができません。ただ、私吉田の見解ですが、筆界特定制度の申請を2申請に分けて申請すれば可能だと考えます。
当該土地と類似する土地の固定資産評価額で、
「手数料」を算出します。
例えば、寺院や教会のような宗教施設の敷地などは、基本的に固定資産税の評価や課税が行われていません。また、私道を含める道路なども、通常であれば非課税扱いです。もし、対象土地が非課税の土地である場合、筆界特定制度の申請手数料は当該土地と類似する土地の固定資産評価額で算出します。この類似する土地は、申請人が選定するわけではありません。
そのため、申請前に一度法務局と相談・協議することをおすすめします。
「手続き費用(測量費用)」の計算方法
手続き費用とは
金額のほとんどが測量費用であり、
予納しなければ申請が却下されます。
手続き費用とは、筆界特定の手続きにおいて行われる、専門的知見を有する行為などに掛かる費用です。例えば、調査が地下の地層までおよび、掘削をするのに土木業者を呼んだとしましょう。すると、この土木業者に支払う費用も手続き費用とされるので、申請人が負担しなければなりません。ただ、実際の手続き費用は、ほとんどの場合、土地の測量費用です。申請人がこの手続き費用を予納しなければ、申請が却下されてしまうので、注意が必要です。
代理人申請と本人申請による手続き費用の違い
代理人申請で必要な測量結果の提出があれば、
制度に支払う測量費用を0円に抑えることが可能です。
土地家屋調査士が代理人となって筆界特定制度の申請をした場合、基本的にはその土地家屋調査士が行った現地の測量結果を基に手続きが進められます。申請の際に添付したこの測量結果だけで筆界特定が可能であれば、予納すべき測量費用は無料です。
一方で、筆界特定制度において本人が申請を行う場合、法務局側(筆界調査委員もしくは法務局に登録された測量業者)が、筆界特定に必要な測量作業を実施します。この測量費用は法務局が定めた計算式に則って算出されますが、その計算式は非常に難解であるため、正確な測量費用を算出するのは簡単ではありません。したがって、本人申請をお考えであれば、下記の具体例を参考にしていただいた上で、吉田登記測量事務所までご相談ください。
「手続き費用(測量費用)」の概算計算の具体例
下記では、吉田登記測量事務所が実際に法務局に申請した案件の中から、本人申請によるものと仮定して、その測量費用を計算してみました。なお、このケースは、大阪府などでは一般的な筆界特定の申請事例と言えるでしょう。
対象甲地(申請地)の登記簿面積は139.88m²で、対象乙地の登記簿面積は143.88m²です。この土地を開発する際の地積測量図が法務局に備えられていますが、図の作成時に境界杭を設置しなかったため、当該区域内に境界標識はありません。
地積測量図には、面積を求めるのに必要な寸法はあるものの、土地周囲の寸法の有無はまちまちです。そのため、正確な面積を確定するには、土地所有者と立会い・協議を行って測量(実測)が必要となります。このケースでは、当初は5番51の所有者から土地を2筆に分筆する依頼を受けました。しかし、5番52の所有者と筆界についての立会いが整わず、やむを得ず筆界特定申請しました。
対象乙地所有者が主張する筆界は、現地にある側溝の中心線です。その土地の購入時に不動産業者から「側溝の中心線が境界線」と聞かされたことが根拠でした。しかし、法務局に地積測量図がある場合、その図から復元した線を筆界として特定するため、不動産業者から聞いた話は事実上反映されないでしょう。
吉田登記測量事務所が請求した報酬金額
上記のケースにおいて、初めから5番51と5番52の筆界特定申請の依頼を受けていれば、その報酬見積もりは55万円+αです。
「+α」は、筆界特定制度の申請後に法務局へ意見聴取に出向いた場合の日当分です。
なお、上記ケースにおける実際の報酬見積もりは、
「68万円」+「18万円+α」でした。
5番51の所有者から分筆登記の依頼を受け、実測作業を進めるうちに申請に至ったのが、見積もり金額の背景にあります。分筆登記に必要な作業の見積もりとして提示していた金額は68万円であり、筆界特定申請に伴う追加分は18万円+αとさせていただきました。
本人申請と代理人申請の費用比較
筆界特定制度は、代理人を立てなくても、比較的簡単に本人で申請することができます。しかし、申請後に必要となる手続き費用や期間を考えると、申請代理人を依頼する方が円滑に筆界を特定できる場合もあります。
5番51と5番52の筆界特定における、本人申請と当事務所の代理申請の違い
本人申請 | 当事務所の代理申請(※1) | |
---|---|---|
費用 | 30万円~40万円 | 55万円+α(※2) |
特定を受ける境界線(※3) | 申請前に予測不可能 | 申請前におおよそ予測可能 |
筆界特定までの期間(※4) | 長い | 短い |
- ※1
- 依頼人が有資格者に代理人を申請する場合、その報酬費用は有資格者が自由に決めることができます。そのため、この金額はあくまでも当事務所の報酬費用であり、他事務所とは金額が異なります。
- ※2
- 法務局へ意見聴取に出向く際の費用については、別途日当報酬とさせていただいているので、「+α」という表記になっています。
- ※3
- このケースでは、土地家屋調査士に依頼することで、すでに法務局調査や現地測量を終えていることが明らかになり、地積測量図からイ-ロの境界を復元することができました。これに対して本人申請だと、「筆界は5番52の所有者が言う、溝の中心線で筆界特定になるかもしれない」と不安を抱えての申請になるでしょう。
- ※4
- この制度では、申請から筆界特定までを6ヶ月以内で処理するように定められています。本人申請であっても、現地測量をする業者の選定や予納額の見積もり作業、法務局と測量業者との契約といった諸作業が伴います。そのため、6ヶ月以内の事件処理は厳しくなるでしょう。
筆界特定制度を利用する上で最も気になるのは、やはり「費用」でしょう。
しかし、この費用は、土地の状況などによって大きく異なってきます。
吉田登記測量事務所では、制度に必要となる費用やお見積もりを無料で算出しております。
費用の内訳に関しても丁寧な説明を心掛けておりますので、まずはお問い合わせください。